中小企業診断士は社会人の学び直しに役立つか
| 第1次試験の合格率(2026年度) | 23.0% |
|---|---|
| 第2次試験の合格率(2025年度) | 17.6% |
| 第1次試験の受験手数料(非課税) | 17,200円 |
| 登録に必要な実務補習・実務従事の日数(合計) | 15日以上 |
| 分類 | 働きながら取る |
| 所管 | 中企庁・厚労省 |
| 最終確認日 | 2026/10/14 |
| 出典 | 15本 |
この記事の要約
中小企業診断士の試験は1次7科目と2次の筆記で、2026年度から口述試験は廃止。科目合格のしくみ、合格率の推移、実務補習・養成課程と更新要件、費用、給付対象講座の探し方まで公式資料で確かめます。
本文
中小企業診断士は、中小企業の経営の診断と助言にあたる人を経済産業大臣が登録する国家資格です。試験は年齢や学歴に関係なく受けられ、2026年度(令和8年度)の第1次試験では、申込者25,512人のうち40代が27.6%、50代が24.0%でした。勤務先は「民間企業勤務」が63.7%を占め、会社で働きながら受ける人が中心の試験です。ただし、試験に合格したあとに登録の手続きがあり、登録後も5年ごとに更新の要件があります。この記事では、試験を実施する一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会の試験案内と統計資料、中小企業庁の公示、e-Govの法令、厚生労働省の教育訓練給付金 検索システム(いずれも2026年10月14日に確認)だけを根拠に、しくみ、合格率の推移、登録までの道、費用、給付の対象講座の探し方を順に確かめます。
資格に意味があるかどうかの見極め方は「意味ない資格」の見分け方で、講座の費用の一部が戻る制度は教育訓練給付金の解説で扱っています。
BASIC01資格の位置づけ:試験の合格と「登録」は別の段階
根拠になる法律は中小企業支援法です。同法第11条は、経済産業大臣が登録簿を備え、中小企業の経営診断の業務に従事する人を登録すると定めています。登録できるのは、試験に合格して実務の経験などの条件を満たした人か、それと同等以上の能力があると認められた人(養成課程の修了者など)です。細かな条件は「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」(経済産業省令)に書かれています。試験の実施事務は、経済産業大臣の指定を受けた一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会が行っています。
つまり道のりは「第1次試験に合格する」「第2次試験に合格する(または養成課程を修了する)」「実務補習などの条件を満たして登録する」「5年ごとに更新する」の4段階です。以下、この順に見ていきます。
FIRST02第1次試験:7科目の択一式で、2日間かけて行う
| 受験資格 | 年齢、学歴などに制限はない |
|---|---|
| 試験の方法 | 多肢選択式による筆記。2日間で7科目を受け、配点は各科目100点 |
| 試験科目 | 経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理(オペレーション・マネジメント)、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策 |
| 試験地 | 札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・広島・松山・福岡・那覇の10地区 |
| 受験手数料 | 17,200円(非課税)。ほかにオンライン決済の事務手数料590円(税込)がかかる(2026年度) |
| 2026年度の日程 | 試験は2026年8月1日・2日に実施済み。合格発表は2026年9月1日に行われた |
受験の申し込みはインターネットだけで、紙の試験案内は配られていません。第1次試験の合格基準は、総点数の60%以上で、かつ満点の40%未満の科目が1つもないことを基準に、試験委員会が相当と認めた得点比率とされています。苦手科目が1つでも大きく崩れると、合計点が足りていても不合格になる仕組みです。
ほかの資格を持っている人は、申請により一部の科目が免除されます。たとえば公認会計士や税理士は「財務・会計」、弁護士は「経営法務」、応用情報技術者など一部の区分の情報処理技術者試験の合格者は「経営情報システム」が対象です。免除された科目は合否の判定から外れます。
PARTIAL03科目合格:3年かけて7科目をそろえる道
第1次試験に合格しなかった場合でも、満点の60%を基準として試験委員会が相当と認めた得点比率に達した科目は「科目合格」になります。科目合格した科目は、翌年度と翌々年度の第1次試験で申請すれば免除され、3年間ですべての科目に合格すれば第1次試験合格です。免除は申請しなければ適用されず、免除を申請した科目はその年に受験できません。また、第1次試験に合格すると、それまでの科目合格による免除の申請資格はなくなります。なお、令和8年熊本地震の影響で2026年度の第1次試験を受けられなかった受験申込者には、受験手数料の返還と科目免除期間の延長の救済措置があります。手続きの期限は2026年10月27日です(連合会の告知による)。
この道を使っている人は少なくありません。連合会の推移表では、2025年度(令和7年度)の第1次試験合格者4,344人に対し、科目合格だけを得た人(試験合格者を除いた実人数)が13,146人いました。仕事の忙しい年は得意な科目を先に固め、翌年に残りを受ける、という組み立てができます。
SECOND04第2次試験:事例4科目の筆記。2026年度から口述試験は廃止
第2次試験は、中小企業の診断と助言に関する実務の事例について筆記で行われます。事例Ⅰから事例Ⅳまでの4科目で、各80分・各100点です。受けられるのは原則として、その年度か前年度の第1次試験合格者です(第1次試験合格の有効期間は2年間)。合格基準は、筆記試験の総点数の60%以上で、かつ満点の40%未満の科目がないことです。
2025年6月25日公布・2026年4月1日施行の規則改正により、2026年度から第2次試験の口述試験が廃止されました。あわせて受験手数料が改められ、第1次試験は14,500円から17,200円に、第2次試験は17,800円から15,100円になりました。2つの合計は改正の前も後も32,300円です。
2026年度の第2次試験は、2026年10月25日に札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の7地区で実施される予定で、合格発表は2027年1月13日の予定です。受験手数料は15,100円(非課税)で、オンライン決済の事務手数料525円(税込)が別にかかります(2026年10月14日確認)。
DATA05合格率の推移
連合会が公表している推移表と2026年度の統計資料から、年度ごとの合格率を抜き出しました。どちらの試験も、欠席した科目がひとつもない受験者を分母にした数字です。
| 2018年度(平成30年度) | 第1次試験23.5%、第2次試験18.8% |
|---|---|
| 2019年度(令和元年度) | 第1次試験30.2%、第2次試験18.3% |
| 2020年度(令和2年度) | 第1次試験42.5%、第2次試験18.4% |
| 2021年度(令和3年度) | 第1次試験36.4%、第2次試験18.3% |
| 2022年度(令和4年度) | 第1次試験28.9%、第2次試験18.7% |
| 2023年度(令和5年度) | 第1次試験29.6%、第2次試験18.9%(第1次試験は那覇地区の再試験を含む) |
| 2024年度(令和6年度) | 第1次試験27.5%、第2次試験18.7% |
| 2025年度(令和7年度) | 第1次試験23.7%(受験者18,360人、合格者4,344人)、第2次試験17.6%(受験者7,044人、合格者1,240人) |
| 2026年度(令和8年度) | 第1次試験23.0%(受験者17,829人、合格者4,099人)。第2次試験は2026年10月25日に実施予定 |
第1次試験の合格率は年度によって23%台から42%台まで大きく動いています。一方、第2次試験は2018年度以降、17.6%から18.9%の狭い幅に収まっています。第2次試験は第1次試験の合格者だけが受ける試験なので、2つの合格率を掛け合わせても「受験者全体の最終的な合格率」にはなりません。直近では、第1次試験は4人に1人弱、第2次試験は5〜6人に1人が合格している、と読むのが正確です。
WHO06受けているのは誰か:30代〜50代の会社員が中心
2026年度の第1次試験の統計資料によると、申込者25,512人の年齢は30代が25.7%、40代が27.6%、50代が24.0%、60代が7.3%でした。合格者4,099人のうち40代は1,107人、50代は924人で、合格者の最年長は76歳です。
勤務先の区分では「民間企業勤務」が16,259人(63.7%)で最も多く、「その他(無職を含む)」1,968人(7.7%)、「政府系以外の金融機関勤務」1,690人(6.6%)、「公務員」917人(3.6%)と続きます。経営コンサルタントとして自営している人は456人(1.8%)でした。独立した専門家が受ける試験というより、組織の中で働く人が経営の知識を確かめに来る試験、という姿が数字から見えます。
ROUTE07登録までの道:実務補習か、養成課程か
第2次試験に合格した人が登録を申請するには、申請の日前3年以内に試験に合格し、合格した日から申請の日までに、決められた実務に従事した日数か実務補習を受講した日数が合計15日以上あることが必要です(規則第1条)。診断の実務に就いていない人は、実務補習で日数をそろえることができます。連合会は国の登録実務補習機関として実務補習を行っています。
| 連合会の実務補習の形 | 8日間コース。実際の企業を訪ねてヒアリングし、グループで診断報告書を作り、最終日に企業へ報告する |
|---|---|
| 登録に必要な回数 | 実務補習だけで日数をそろえる場合、8日間コースなら2回受講する(過去に5日間コースを受講済みの人は、受講日数の合計が15日以上)。実務に従事した日数と合わせて15日以上にすることもできる(規則第1条) |
| 受講資格(2026年7月〜9月実施分) | 2023〜2025年度のいずれかの年に第2次試験に合格し、まだ登録していない人(第2次試験合格の有効期間は3年間) |
| 受講手数料(2026年7月〜9月実施分) | 1回127,300円(テキストを持っている人)または128,000円(テキストを持っていない人)。2回受講する場合は255,300円。いずれも税込み |
もう一つの道が養成課程です。第1次試験の合格者は、合格した年度とその翌年度の2年間に限り、中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する中小企業診断士養成課程を受講できます。養成課程を修了した人は、修了後3年以内であれば第2次試験を受けずに登録を申請できます(規則第2条)。
ただし時間と費用は大きく違います。養成課程の期間と費用は実施機関ごとに異なるため、厚生労働省の教育訓練給付金 検索システムで、講座の「詳細を見る」から確認してください。大学院の学費と使える支援は社会人の大学院・大学の学び直しにまとめています。
RENEW08登録後:5年ごとの更新と、休止の制度
登録の有効期間は5年です(規則第8条)。更新登録を受けるには、前回の登録から更新の申請までの間に、次の2つを両方満たす必要があります(規則第10条)。
- 知識の補充:理論政策更新研修などの修了、論文審査の合格、研修の指導のいずれかを合計5回以上
- 実務の従事:診断や助言の実務への従事、実務補習の受講、実務補習の指導などを、1日1点として合計30点以上
本業が忙しく実務の点数をそろえにくい人のために、休止の制度があります。登録の有効期間が満了する日までに休止を申請しておけば、休止の申請から15年を超えない範囲で再開の申請ができます。再開するには、申請の日前3年以内に実務または実務補習を合計15日以上、研修などを合計5回以上行っていることが条件です(規則第11条・第12条)。合格して登録したあとも、研修と実務の時間を確保して維持していく資格です。
COST09費用の目安:受験手数料は合計32,300円(別にオンライン決済の事務手数料)
| 第1次試験の受験手数料 | 17,200円(非課税)。オンライン決済の事務手数料590円(税込)が別にかかる(2026年度) |
|---|---|
| 第2次試験の受験手数料 | 15,100円(非課税)。オンライン決済の事務手数料525円(税込)が別にかかる(2026年度) |
| 実務補習(連合会の8日間コースを2回) | 255,300円(税込み・テキストを持っていない人・2026年7月〜9月実施分)。次回以降の実施分の手数料は連合会の実務補習のページで確認する |
| 養成課程 | 実施機関ごとに異なる。教育訓練給付金 検索システムの講座の「詳細を見る」で確認できる |
| 登録・更新の費用 | 登録申請や更新研修にかかる費用は、この記事の根拠資料では確認できなかった |
受験手数料は1回ごとにかかるので、科目合格を使って3年かける場合は、第1次試験の手数料を受ける年の数だけ払うことになります。これとは別に教材や受験講座の費用がかかり、独学か講座かで大きく変わります。講座を比べる軸は通信講座の比較と選び方に整理しています。
KYUFU10教育訓練給付の対象講座の探し方
厚生労働省の「教育訓練給付金 検索システム」(掲載は2026年10月1日時点の指定講座の情報)では、「フリーワードで検索する」の検索窓に「中小企業診断士」などと入れて、対象講座を探せます。検索するときは次の点に注意してください。
- 初期設定では、実施方法のうち「通学(昼間)」「通学(夜間)」「通学(土日)」だけにチェックが入っている。通信講座やeラーニングを探す場合は「通信(郵送)」「通信(eラーニング)」にもチェックを入れる
一般教育訓練と専門実践教育訓練では給付率も手続きも違い、受講を始める前の手続きが要る類型もあります。検索のしかたと申請の順番は教育訓練給付 対象講座の探し方と申請の順番で、給付率と上限は教育訓練給付金の解説で確認してください。検索システムは、受講開始日が講座の指定期間中かどうかを、手続きをするハローワークと受講先に確認するよう求めています。講座の「詳細を見る」で指定期間を見てから申し込むのが安全です。
FIT11向いている人、向いていない人
ここまでの事実から、学び直しで中小企業診断士が合いやすいのは次のような人です。
- 経済、財務・会計、企業経営理論、運営管理、法務、IT、中小企業政策を、一つの試験範囲としてまとめて学び直したい会社員
- 科目合格(3年)、第1次試験合格(2年)、第2次試験合格(3年)と、期限のある段階を何年かかけて順に越える計画を立てられる人
- 金融機関や支援機関、取引先とのやり取りなどで、中小企業の経営課題に関わる仕事をしている人、これから関わりたい人
逆に、短い期間で一つ資格を取って区切りをつけたい人や、登録後に研修や実務の時間を取れない人には負担の大きい資格です。合格や登録が収入の増加につながるかどうかを示す公的な統計は、この記事の根拠資料にはありません。まずは第1次試験の7科目の中身を見て、仕事に引きつけて学べる科目がどれだけあるかで判断するのが現実的です。
FAQ12よくある質問
出典
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「中小企業診断士試験」(2026年10月14日確認)
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第1次試験案内」(PDF)(2026年10月14日確認)
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第2次試験案内」(PDF)(2026年10月14日確認)
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「申込者数・合格率等の推移」(PDF)(2026年10月14日確認)
- 中小企業庁「令和8年度の中小企業診断士試験について」(2026年10月14日確認)
- e-Gov法令検索「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」(2026年10月14日確認)
- 厚生労働省「教育訓練給付金 検索システム」(2026年10月14日確認)
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第1次試験について(試験案内の概要)」(2026年10月14日確認) ─ https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_1ji_shiken_about.html
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第2次試験について(試験案内の概要)」(2026年10月14日確認) ─ https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_2ji_shiken_about.html
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度からの中小企業診断士試験における改正点について」(2026年10月14日確認) ─ https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_jyukentesuryokaitei_koujyutushikenhaishi.html
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年度中小企業診断士第1次試験に関する統計資料」(PDF)(2026年10月14日確認) ─ https://www.jf-cmca.jp/attach/test/r08/r08_1ji_toukei.pdf
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「実務補習」(2026年10月14日確認) ─ https://www.jf-cmca.jp/contents/005_jitsumuhoshu.html
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年7月・8月・9月実施中小企業診断士実務補習について」(2026年10月14日確認) ─ https://www.jf-cmca.jp/contents/005_c_jtsumuhoshu/005_R8/R8_about_jitsumuhoshu.summer.html
- e-Gov法令検索「中小企業支援法」(2026年10月14日確認) ─ https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000147
- 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会「令和8年熊本地震に伴う災害の影響により令和8年度中小企業診断士第1次試験を受験することができなかった受験申込者の皆さまへ(受験手数料返還および科目免除期間の延長について)」(2026年10月14日確認) ─ https://www.jf-cmca.jp/contents/010_c_/010_c_r08_shiken/R08_1ji_shiken_oshirase4.html
確認状況
2026/10/14
編集部
制度・数字は改正等で変わります。最新の内容はリンク先の公式ページでご確認ください。


