危険物取扱者乙4は社会人の学び直しに役立つか
| 試験手数料(非課税) | 5,300円 |
|---|---|
| 乙4の合格率(2025年度・編集部集計) | 31.9% |
| 乙4の受験者(2025年度・編集部集計) | 222,545人 |
| 免状の交付手数料(1種類につき) | 2,900円 |
| 分類 | 働きながら取る |
| 所管 | 総務省 |
| 最終確認日 | 2026/10/14 |
| 出典 | 18本 |
この記事の要約
乙4は受験資格なし、試験手数料5,300円。2025年度の受験者は22万2,545人、合格率は31.9%でした(編集部集計)。消防法で何ができる資格なのかを、消防庁と試験機関の一次情報で確かめます。
本文
危険物取扱者の乙種第4類(乙4)は、ガソリン、灯油、軽油などの引火性液体を扱うための国家資格です。受験資格はなく、試験手数料は5,300円。一般財団法人 消防試験研究センターの公表データを編集部で集計すると、2025年度(令和7年度)の乙4の受験者は22万2,545人で、危険物取扱者試験の受験者全体(31万1,230人)のおよそ7割を占めていました。合格率は31.9%で、受験者の3人に2人以上が不合格になっています。
この資格は、どこで意味を持つかが法律で決まっているのが特徴です。この記事では、消防法と総務省消防庁の資料で「資格で何ができるのか」を確かめ、試験の範囲、合格基準、受験者数と合格率を試験機関の数字(2026年10月14日に確認)で整理します。求人数や年収への影響は、公的な統計で確かめられなかったため扱いません。資格を取る前の考え方は「意味ない資格」の見分け方と50代からの資格の選び方にまとめています。
SCOPE01乙4で扱えるもの:ガソリン、灯油、軽油などの引火性液体
危険物取扱者の免状は甲種、乙種、丙種の3種類です。甲種はすべての類の危険物、乙種は免状に指定された類の危険物を扱えます。乙種は第1類から第6類まで分かれていて、第4類は「引火性液体」です。消防試験研究センターは、第4類の例としてガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類を挙げています。
消防法の別表では、第4類はさらに引火点などで品名が分かれます。たとえば「第一石油類」はアセトン、ガソリンその他1気圧で引火点が21度未満のもの、「第二石油類」は灯油、軽油その他1気圧で引火点が21度以上70度未満のもの(塗料類など総務省令で除くものを除く)と定められています。
丙種との違いも押さえておきます。丙種が扱えるのは、ガソリン、灯油、軽油、第三石油類(重油、潤滑油及び引火点130度以上のものに限る)、第四石油類、動植物油類に限られ、ほかの人の取扱いに立ち会うことはできません。乙4はこの立会いができる点が大きく違います。
ROLE02消防法上の役割:取扱い、立会い、保安の監督
消防法では、一定量(指定数量)以上の危険物は、製造所、貯蔵所、取扱所(あわせて「危険物施設」)以外で貯蔵したり取り扱ったりしてはならないとされています。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて、10日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は除かれます(消防法第10条第1項)。危険物施設を設けるには、市町村長等の許可が必要です。指定数量は品名ごとに政令で決まっていて、第4類では、第一石油類の非水溶性液体が200リットル、第二石油類の非水溶性液体が1,000リットルなどです。
この危険物施設の中で、危険物取扱者は次の役割を持ちます。消防庁の「令和7年版 消防白書」と消防法の条文から整理しました。
- 取扱い:危険物施設での危険物の取扱いは、危険物取扱者が自ら行うか、ほかの人が取り扱う場合には甲種または乙種の危険物取扱者が立ち会って行う(消防法第13条第3項)。乙4が取り扱い、立ち会えるのは、免状に指定された第4類の危険物(同第13条の2第2項、危険物の規制に関する規則第49条)
- 危険物保安監督者:政令で定める危険物施設の所有者等は、甲種または乙種の危険物取扱者で、6か月以上の危険物取扱いの実務経験がある人の中から危険物保安監督者を定め、その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない(同第13条第1項)。乙4の場合、監督できるのは第4類の危険物の取扱作業
- 保安講習:危険物施設で危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年に1度、都道府県知事等が行う保安講習を受けなければならない(同第13条の23。受講の時期は危険物の規制に関する規則第58条の14)
- 移送:移動タンク貯蔵所による危険物の移送は、その危険物を取り扱うことができる危険物取扱者を乗車させてしなければならず、乗車中は危険物取扱者免状を携帯していなければならない(同第16条の2)
つまり、乙4の免状が法律上の意味を持つのは、第4類の危険物を指定数量以上扱う施設で働く場合です。資格を取っただけで何かの業務ができるようになるわけではなく、危険物施設で働くとき、または保安監督者を任されるときに効いてくる資格だと考えると、期待値がずれません。
危険物施設は全国にどのくらいあるのか。消防白書の資料(危険物規制事務調査による)では、2025年(令和7年)3月31日現在で37万7,977施設です。このうち給油取扱所(給油設備で自動車等の燃料タンクに直接給油するための取扱所)が5万4,843、移動タンク貯蔵所(車両に固定されたタンクで危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所)が6万3,471でした。2016年(平成28年)3月31日現在の41万6,234施設からは減っています(編集部の比較)。
EXAM03試験のしくみ:受験資格なし、マークシートで2時間
消防試験研究センターは、乙種と丙種について「受験資格は必要ありません。どなたでも受験できます」としています。試験は東京の中央試験センターと道府県の支部で行われ、住所や勤務地にかかわらず、希望する都道府県で受験できます。試験日程と受付期間は支部ごとに違うので、センターの試験日程一覧で確かめます。
| 試験科目と問題数 | 危険物に関する法令15問、基礎的な物理学及び基礎的な化学10問、危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法10問(合計35問) |
|---|---|
| 方式 | マーク・カードを使う筆記試験。五肢択一式。実技試験はなし |
| 試験時間 | 2時間 |
| 試験手数料 | 5,300円(非課税)。一度納めた手数料は返還されない |
| 申込み | 電子申請と書面申請。センターは令和10年度から受験申込みを原則として電子申請のみとする予定としている |
同じ試験日に、同じ種類の試験を2回以上受けることはできません。試験会場では電卓や定規類、スマートフォンなどは使えないため、物理・化学の計算も手で解く前提で準備します。
PASS04合格基準:3科目それぞれで60%以上
合格基準は「試験科目ごとの成績が、それぞれ60%以上」です。合計点ではなく科目ごとに判定されるので、1科目でも60%に届かなければ不合格になります。問題数に当てはめると、法令は15問中9問、物理・化学は10問中6問、性質・消火は10問中6問以上の正解が目安です(編集部の計算)。
すでに乙種のほかの類の免状を持っている人は、受験の申請時に免状のコピーを添付すると、乙種の試験で法令と物理・化学が全部免除され、性質・消火の10問だけを35分で受けます。最初に乙4を取り、あとから第1類などを足していく場合は、2つ目以降の負担が軽くなるしくみです。
DATA05受験者数と合格率:年度で見ると3割強
消防試験研究センターは、月ごとの試験実施状況(受験者数、合格者数、合格率)と、年度ごとの都道府県別合格者数を公表しています。乙4の年度ごとの受験者数は、月ごとの数字を編集部で合計したものです。合格者数の合計は、センターの都道府県別合格者数表の年度合計と一致することを確かめています。危険物取扱者試験全体の令和7年度の受験者数31万1,230人、合格者数11万9,136人は、センターの「令和7年度 事業報告書」の数字と一致します。
| 2023年度(令和5年度) | 受験者223,797人、合格者71,670人、合格率32.0% |
|---|---|
| 2024年度(令和6年度) | 受験者223,846人、合格者71,023人、合格率31.7% |
| 2025年度(令和7年度) | 受験者222,545人、合格者71,059人、合格率31.9% |
| 2026年度(令和8年度)4月〜7月 | 申請者86,938人、受験者75,829人、合格者25,540人、合格率33.7%(センター公表値) |
受験者は3年続けて22万人台で、合格率は31〜32%台です。消防白書も、2024年度の危険物取扱者試験の受験者数は乙種第4類が最も多く、次いで丙種、甲種で、この3種類で全体の約8割を占めるとしています。
同じ表で乙種の第1類、第2類、第3類、第5類、第6類を見ると、2026年度4月〜7月の合格率は64〜68%前後です。ただ、これらの類は乙種の免状を持つ人なら法令と物理・化学が免除されるため、受験者の条件が乙4とそろっているとは限りません。乙4の合格率だけを見て「ほかの類より難しい」とは言い切れない点に注意してください。
LICENSE06合格したあと:免状の交付と保安講習
危険物取扱者免状は、試験に合格した人に都道府県知事が交付します(消防法第13条の2)。申請先は受験した道府県のセンター支部(東京都は中央試験センター)で、手数料は1種類につき2,900円です。納付方法は都道府県ごとに違います。
危険物施設で取扱作業に従事することになったら、保安講習の受講が始まります。危険物の規制に関する規則では、従事することになった日から1年以内に受講し、その後は講習を受けた日以後の最初の4月1日から3年以内ごとに受けることになっています(従事する日の前2年以内に免状の交付や講習を受けている場合の特例あり)。消防白書では、2024年度の保安講習は全国で1,479回行われ、18万4,998人が受講しました。
FIT07学び直しで乙4が合う人、合わない人
ここまでの事実から、乙4が学び直しの選択肢になりやすいのは次のような人です。
- 給油取扱所、移動タンク貯蔵所、工場の貯蔵タンクなど、第4類の危険物を扱う施設で働いている、または働くことを考えている人
- いまの職場の、第4類の危険物を扱う危険物施設で、取扱いの立会いや、実務経験を積んだうえで第4類の取扱作業の危険物保安監督者を任される可能性がある人
- 将来、甲種まで進みたい人。乙種の免状を取ったあと危険物施設での実務経験が2年以上あるか、第1類または第6類、第2類または第4類、第3類、第5類の4種類以上の乙種免状があれば、甲種の受験資格になる
反対に、危険物施設で働く予定がない人にとっては、免状が法律上の役割を持つ場面がほとんどありません。燃焼や消火のしくみを学ぶ教養としての価値はありますが、転職の材料として考えるなら、目指す職場が危険物施設にあたるかどうかを先に確かめてください。
STUDY08勉強の始め方
消防試験研究センターは、乙種第4類の過去の試験問題の一部をウェブサイトで公開しています(令和7年度以前に出題されたもの。令和8年6月更新)。まずこれを解いて、3科目のどれが60%に届きそうにないかを確かめてから教材を選ぶと、遠回りが減ります。センターは、自分の学習のための印刷など教育目的(非営利)の場合を除き、公開問題の許可のない複製や転用などの二次利用を禁止しています。
講座を使う場合は、受講料の一部が戻る教育訓練給付の対象かどうかを申し込み前に確かめます。調べ方は教育訓練給付 対象講座の探し方、独学か講座かの比べ方は通信講座の比較と選び方にまとめています。
FAQ09よくある質問
出典
- 総務省消防庁「令和7年版 消防白書」第1章第2節 1.危険物規制
- e-Gov法令検索「消防法」(昭和23年法律第186号)
- 一般財団法人 消防試験研究センター「危険物取扱者試験 試験の方法」
- 一般財団法人 消防試験研究センター「試験実施状況」
- 総務省消防庁「令和7年版 消防白書」資料1-2-10 危険物施設数の推移(2026年10月14日確認) ─ https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r7/document/69453.html
- e-Gov法令検索「危険物の規制に関する政令」(第3条、別表第三)(2026年10月14日確認) ─ https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306
- e-Gov法令検索「危険物の規制に関する規則」(第49条、第58条の14)(2026年10月14日確認) ─ https://laws.e-gov.go.jp/law/334M50000002055
- 一般財団法人 消防試験研究センター「危険物取扱者試験」(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/
- 一般財団法人 消防試験研究センター「受験資格」(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/qualified.html
- 一般財団法人 消防試験研究センター「試験科目及び問題数」(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/subject.html
- 一般財団法人 消防試験研究センター「危険物取扱者について」(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/knowledge/kikenbutsu.html
- 一般財団法人 消防試験研究センター「試験実施状況(令和7年度3月)」(各月のページを集計に使用)(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/result/r07/3.html
- 一般財団法人 消防試験研究センター「令和7年度 危険物取扱者試験合格者数(都道府県別)」PDF(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/result/pdf_files/R07_goukaku47.pdf
- 一般財団法人 消防試験研究センター「令和6年度 危険物取扱者試験合格者数(都道府県別)」PDF(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/result/content/R06_goukaku47.pdf
- 一般財団法人 消防試験研究センター「令和5年度 危険物取扱者試験合格者数(都道府県別)」PDF(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/result/content/R05_goukaku47.pdf
- 一般財団法人 消防試験研究センター「令和7年度 事業報告書」PDF(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/pdf_files/report_r7.pdf
- 一般財団法人 消防試験研究センター「新規免状の交付」(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/license/new.html
- 一般財団法人 消防試験研究センター「過去に出題された問題」(2026年10月14日確認) ─ https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/exercise.html
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